米ドルの崩壊は近いのか?

米ドルの信用は年々下がってきていましたが、近年で特に致命的だったのは、米国のバイデン政権により、ウクライナ侵攻(本当は侵攻じゃないんだけどここでは割愛)への制裁として、ロシアの外貨準備金を凍結した事でしょう。

外貨準備金とはいわゆる国の貯金にあたるわけです。

それを取り上げる事は、相手の貯金を奪う行為となるのです。

ちなみに日本もロシアの外貨準備金を凍結しています。

日銀、ロシアの外貨準備を凍結 21年時点で4~5兆円

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB28D0K0Y2A220C2000000

ちょっと余談ですが、この外貨準備の凍結は日本がロシアに宣戦布告しているのと同じようなものですが、その事実を報道しているメディアは少ないのが疑問です。

もし、あなたが外貨準備金の運営者だったら、そんな国の通貨を持ちたいですか? 

と聞かれたら 当然答えは Noですよね?

これがきっかけとなり各国はドル離れを加速させています。

結論から申しますと、既に崩壊は始まっています。

正確には元々いつか崩壊するシステムだったということですが、近年その崩壊速度が一気に加速している感じです。

以下にその経緯を説明していきます。

日本のメディアでは全く報道されないので、覚えている方がいるかどうかわかりませんが、

去年8月にロシアとサウジアラビアは共同軍事協力に調印したと発表がありました。

Saudi Arabia, Russia sign deal to develop joint military cooperation

サウジアラビアとロシアが共同軍事協力を発展させる協定に署名

https://english.alarabiya.net/News/gulf/2021/08/24/Saudi-Arabia-Russia-sign-deal-to-develop-joint-military-cooperation

これがかなり重要なニュースなのですが、まず、米ドル崩壊のシナリオとなる前提の説明をします。

アメリカが世界最強なのは、世界最強の軍隊を持っているというのも一つですが、もう一つは世界の貿易で必要とする米ドルという基軸通貨を持っているからです。

世界中の貿易でのドル使用量は全体の8割以上と言われているので、ドルへの尽きない需要があるため、アメリカはお金が必要になればどんどん印刷すればよいわけです。

その中には無駄と思える物も多くあり、アメリカは第二次世界大戦以降も、朝鮮戦争をはじめ、ベトナム戦争やドミニカ共和国占領、レバノン危機など、次々に複数の国で戦争を繰り返し、戦費がかさみ、ドルを大量に発行し続けました。

アメリカ合衆国が関与した戦争一覧

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%A1%E3%83%AA%E3%82%AB%E5%90%88%E8%A1%86%E5%9B%BD%E3%81%8C%E9%96%A2%E4%B8%8E%E3%81%97%E3%81%9F%E6%88%A6%E4%BA%89%E4%B8%80%E8%A6%A7

ベトナム戦争の頃には、大量の米ドルを保有していたイギリスやフランスなど各国は不信感を抱きはじめ、手持ちの米ドルとアメリカが所有する金との交換を要求し始めました。

この当時はまだ、アメリカは金本位制でしたので、金1オンス35ドルでの交換が約束されていました。

金本位制とは

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%87%91%E6%9C%AC%E4%BD%8D%E5%88%B6

そこで、アメリカから金が流出し続けた結果、半分近くにまで金保有量が減り、それに危機感を抱いた当時のリチャード・ニクソン米大統領は、1971年 8月15日、ドルと金の交換の停止を宣言。

いわゆる「ニクソンショック」が発生しました。

この宣言により、金の裏付けなしにアメリカは無制限にドルを発行できる様になった代わりに、金に裏付けされていた米ドルは、何の裏付けもない不安定な通貨となり、70年代に2度発生したオイルショックへと続いていく事になるのです。

しかし、通貨の発行量に対して需要が追いつかなければ直ぐに先細りしていくだけです。

そこで、3年後の1974年、当時国務長官のキッシンジャーがOPECの長であるサウジアラビアに赴き、この後40年間封印されていた以下の報道にある秘密協定を結ぶ事になるのです。

基本的なフレームワークは驚くほど単純でした。アメリカはサウジアラビアから石油を購入し、王国に軍事援助と装備を提供するだろう。その見返りに、サウジアラビアは、何十億ドルもの石油ドル収入を国債に戻し、アメリカの支出に資金を供給するだろう。

The untold story behind Saudi Arabia’s 41-year US debt secret
https://economictimes.indiatimes.com/news/international/business/the-untold-story-behind-saudi-arabias-41-year-us-debt-secret/articleshow/52528470.cms?utm_source=contentofinterest&utm_medium=text&utm_campaign=cppst

これで、世界各国は石油やその他の資源を買うためには、米ドルを保有する必要が出てきます。

こうして、ドルは金ではなく、石油で裏付けされることになります。

これが、オイルマネー、ペトロダラー (Petrodollar)と言われる所以です。

これがアメリカにとってどれだけ重要だったかと言うと、これを破ろうと画策した国の指導者たちは容赦なく滅ぼされてきました。

例えば、米ドル以外の通貨で石油取引しようとしたイラクのフセイン大統領はフセインは大量破壊兵器があると言いがかりをつけられて殺されました。後に大量破壊兵器はなかった事が判明しています。

リビアのカダフィー大佐は石油取引をドル以外にシフトする戦略を企画したことで、アメリカは反政府軍を支援してカダフィーを追い詰め裁判なしに処刑しました。

国内であれほど人気があった指導者の不自然すぎる反政府軍の蜂起に疑問を抱かざるをえません。

これが世界の現実です。

しかしこれが、冒頭でお伝えしたニュースの通り急展開を迎える。

サウジアラビアとロシアが共同軍事協力を発展させる協定に署名

https://english.alarabiya.net/News/gulf/2021/08/24/Saudi-Arabia-Russia-sign-deal-to-develop-joint-military-cooperation

2021年8月24日、サウジアラビアとロシアは軍事協力協定に調印したと発表。

ちょうど同じ月にアメリカはアフガンから逃げるように撤退しました。

ペトロダラー (Petrodollar)の前提は「軍事協定によりサウジアラビアをアメリカが守るから、石油取引はドルを使え」という秘密協定の上に成立していました。

そのサウジアラビアが今度は、ロシアと軍事協定を結ぶことによってアメリアの庇護は要らなくなったのです。

これはアメリカの軍事産業にとっても重要なターニングポイントとなります。

どういうことかと言うと、説明する前に世界で一番兵器を輸入する国はインドですが2番目はどこでしょうか?

兵器の輸入が多い国ランキング

https://news.yahoo.co.jp/articles/f6ec663f204f4f25362b0bb3dd262e1eb2b8ab08/images/000

答えは、サウジアラビアです。 

ちなみに一位のインドは主にロシアから兵器を輸入しています。

では、次に世界で1番の兵器輸出国はアメリカですが、2番めの国は?

世界で最も武器を輸出している国トップ10

https://www.businessinsider.jp/post-163973

ロシアです。

そして1位はアメリカですが、

サウジアラビアは、アメリカの武器輸出の一番のお得意さんでもある訳ですが、そのサウジアラビアがロシアと軍事協定を締結。

つまり兵器輸入の1位のインドと2位のサウジアラビアが両方ともロシアと兵器取引をすることになるのです。

さらに、今年3月には、サウジアラビアは中国との石油取引を中国元で行うことを計画していることが明るみに出ました。

サウジ、対中石油輸出で人民元建て決済を検討…背景にバイデン政権への不満か

https://www.yomiuri.co.jp/economy/20220316-OYT1T50129/

つまり、今後サウジアラビアの王室はロシアとの軍事協定により守られ、石油取引はドル以外で行うということです。

これでアメリカは、軍事産業でもロシアに大口顧客を奪われ、米ドルの需要も大きく減る事になるでしょう。

さらにアメリカ軍は、米軍のアフガニスタンの撤退により、70億ドル相当の兵器を放置したり、ウクライナ国内へ兵器を送っています。いざ有事になった時に足りるのか不安になるレベルだとのリーク情報もあります。

印露、軍事協力10カ年計画で合意 米国とロシア、インドで綱引き

https://www.asahi.com/articles/ASPD75GS3PD7UHBI019.html

このサウジアラビアをめぐる異常事態に気づいたアメリカは、バイデンを7月15日にサウジアラビアに送り込みますが、何の成果も出せず帰国。

バイデンがサウジアラビアに訪問した直後の7月22日にプーチンはBRICS諸国(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ(頭文字を取ってBRICS))は新しい国際基軸通貨を確立するために協業していると発表しました。

そして、サウジアラビアはエジプトやトルコなどの中東諸国とともに、BRICSに参加を検討中とのニュースが出てきます。

Saudi Arabia, Egypt and Turkey apply to join Brics

https://morningstaronline.co.uk/article/f-2nd-saudi-arabia-egypt-and-turkey-apply-join-brics-forum

つまり、バイデンはサウジアラビアに、なぜ訪問したかと言うと、BRICSに参加しないでくださいとお願いに行ったというのが本音でしょう。でなければ米ドルが崩壊します。

しかし結果は先に述べた通りです。

以上の事をまとめますと、

今までは、

アメリカの強さは、世界最強の軍隊と世界が必要とする基軸通貨を保有していた。

1971年まではドルは金本位制、それ以降は石油に裏付けされたペトロダラー。

その引き換えが、アメリカがOPECの盟主であるサウジアラビアとの軍事協定。

現在

ロシアがサウジアラビアとの軍事協定により、アメリカの最大の兵器輸出国である、サウジアラビアをロシアに取られる。

サウジアラビアやその他、中東諸国、資源国のいくつかはBRICS基軸通貨システムに参加検討中。

サウジアラビアはドル以外での石油の取引が可能。

インドは自国通貨のルピーを使ってロシアとの取引の準備中

国際的決済網 SWIFTから追い出されたロシアは、ルーブルでの決済をEU諸国など非友好国に要求。

それではこれらのBRICS諸国の通貨の裏付けはどうすのか?

まだ正式には発表されていませんが、金やその他の資源などを裏付けしたものになるのではと予想しています。

現在、BRICSシステムへの参加を検討している国は増える一方です。

このシステムが稼働し米ドル以外で国際取引を開始したら、需要が大きく減る米ドルがどうなるかは火を見るより明らかですね。

その時に、アメリカのドルを買い支えるのは誰か?

日本は今後間違いなく大きな荒波に飲み込まれていく事になるでしょう。

危機に備えましょう。

この記事は以下のTwitter投稿を元に足りない部分を追加して作成致しました。